これ1つにまとめました!密教の仏様・神様・女神様一覧&曼荼羅とは?

密教の仏様・神様一覧_曼荼羅とは_如来・菩薩・性行為ヤブユムと守護尊(イダム・ヘールカ)・護法神・四天王・女神_日本とチベット密教の違

みなさんこんにちは! 旅行観光情報サイト「旅狼どっとこむ」の旅狼かいとです!

今回は、日本をはじめとする東アジアや南アジアを中心に信仰されている大乗仏教の一宗派、密教における仏様神様瞑想の修行には必須の曼荼羅についてご紹介していきます!

広く信仰されている如来菩薩四天王などの護法神はもちろん、性行為を取り入れた仏教として知られるチベット密教ならではの表現であるヤブユムや守護尊(イダム)・へールカ、女神信仰についてまで、特徴とその種類をわかりやすく解説します。

日本密教とチベット密教の違いも感じられると思いますので、密教の仏や神々について知りたい方はもちろん、密教の寺社仏閣や、チベット密教が盛んなインドのラダックやネパール、ブータンなどへ観光を予定している方はぜひ参考にしてみてくださいね!

それでは早速、どんな仏様や神様がいるのか、一緒にみていきましょう!


目次

金剛界五仏、五智如来

密教の仏様・神様・女神様一覧と曼荼羅について_五智如来(金剛界五仏)_大日・阿閦・宝生・阿弥陀・不空成就

最初にご紹介するのが、五智如来(金剛界五仏)」と呼ばれる、密教における5人の最高位のホトケたちです。すでに輪廻から解脱し、遠い世界にいる存在とされています。

※ここでいう「ホトケ」は「仏陀(ブッダ、釈迦牟尼)」のことであり、それぞれの如来や菩薩は、仏陀がその状況に応じて様々な姿をとっているうちの⼀つと考えられています。

  • 大日だいにち(Mahāvairocana):中央、白(太陽本来の色)
  • 阿閦あしゅく(Akṣobhya):東、青(朝日の色)
  • 宝生ほうしょう(Ratnasambhava):南、黄(日中の太陽の色)
  • 阿弥陀あみだ(Amitābha、Amitāyus):西、赤(夕陽の色)
  • 不空成就ふくうじょうじゅ(Amoghasiddhi):北、緑または黒(日没後の闇の色)

日本の仏教・密教では、大日如来は太陽本来の光の色、東の阿閦如来は夜明け前の暗がりの青、宝生如来は太陽が南にきたときの黄色、阿弥陀如来は日没時の赤、不空成就如来は太陽が沈んだ後の闇を緑で示しているともいわれます。

五仏の多くは頭を刈った僧の姿で表され、すでに悟りを開いているため、姿も質素なことが多いです。ただ、ときには髪を長く伸ばし、冠や首飾り、腕輪などきらびやかに着飾った菩薩のような姿で表されることもあります。

大日如来(ヴァイローチャナ)

大日如来は、五仏の中でもっとも中心的な仏です。7世紀頃にインドで成立したとされる『大日経』で初めて登場しましたが、そこでは釈迦如来や薬師如来のような僧形ではなく、菩薩のような飾りを身にまとった煌びやかな姿で表現されていました。

大日如来は、その身体が仏教の真理(法)そのものであると考えられ、「法身ほっしん」と呼ばれます。そして、チベット密教においては「大日如来と自身とが一体である」という悟りの境地(解脱)を目指します

もとは太陽神であることから、大日如来の身体は太陽の光を示す白色で表現されることが多いです。五⼤元素では「」に該当します。

印相は、ブッダが説法している際の姿であり「真実を説く」という意味をもつ「転法輪印てんぽうりんいん(説法印)」や、仏の智慧に入ることを意味する「智拳印ちけんいん」、あるいは瞑想中の姿を表し、仏と人が一体の世界を示す「禅定印」を結んでいます。

阿閦如来(アクショーブヤ)

阿閦如来は、大日如来のに位置する如来です。

「阿閦(アクショーブヤ)」とはサンスクリット語で「動じない者」を意味し、阿閦如来は「悟りを開いたブッダの何事にも動じない姿」を表しているといわれます。また、身体が青色をしており、青は密教において仏法の障害や悪魔を打ち砕く仏の怒りの色とされています。

五⼤元素では「」に該当し、印相は、ブッダが悪魔を追い払ったときの姿、あるいは、仏の心が動じないことを示す「触地印しょくちいん(降魔印)」を結んでいます。

宝生如来(ラトナサンバヴァ)

大日如来のに位置する宝生如来は、サンスクリット語でその漢字のごとく「宝から生まれたもの」を意味する「ラトナサンバヴァ」と呼ばれ、富を司るです。身体は黄色で、財としての黄金と関係があるといわれています。

印相は、右手のひらを上に向け、恵みを与えることや願いを叶えることを表す「与願印よがんいん」を結んでいます。五⼤元素では「」に該当します。

阿弥陀如来(アミターユス、アミターバ)

大日如来の西に位置する阿弥陀如来は、西方にある仏の国「極楽浄土」に住み、生きとし生けるもの(衆生)を救うためにこの世界に表れる仏として、密教が盛んになる以前から信仰されてきました。日本でも非常に馴染みがある如来様ではないでしょうか。

阿弥陀」はサンスクリットで「ア・ミタ」、つまり「量ることができないほど多くの」「無量の」という意味です。そして、「ア・ミタ」のうしろに、「ア・ユース(長寿)」あるいは「アーバ(光)」をつけることで、阿弥陀如来は二通りの解釈がなされました

アミターユス(Amitāyus)」は「量ることができないほど多くの年月の間存在する仏という意味で、そこからこの阿弥陀如来は無量寿むりょうじゅ如来とも呼ばれます。

アミターバ(Amitābha)」は「量ることができないほど多くの光をもつ仏という意味で、そこからこの阿弥陀如来は無量光むりょうこう如来とも呼ばれます。

無量寿如来も無量光如来も、どちらも阿弥陀如来を指す別名として知られており、チベット密教における阿弥陀如来は、身体は赤色、両手のひらを重ねて瞑想する姿である「禅定印」を結んでいます。五⼤元素では「」に該当します。

不空成就如来(アモーガシッディ)

最後にご紹介する五智如来、不空成就如来は、大日如来のに位置します。サンスクリット語名に含まれる「アモーガ」は「むなしからず」という意味で、「アモーガシッディ」で「完成(成就)を必ず(不空)得るもの」、つまり、不空成就如来が「何事も漏らさず成し遂げること」を表現しているといいます。

身体は緑色をしており、右手を挙げて手のひらをこちらに向け、人々の恐れを取り除いて救済することを表現する「施無畏印せむいいん」を結んでいます。五⼤元素では「」に該当します。

持金剛仏(ヴァジュラダーラ、Vajradhara)

密教における五仏には含まれませんが、後期密教において「本初仏(宇宙の始まり)」とされたのが「持金剛仏です。その名の通り金剛を手に持ち、その両手をクロスさせているのが特徴です。

もともとは五仏(五智如来)に続く第六尊とされていましたが、その後、五仏の特性のすべてを兼ね備えると同時に、五仏を統括する第六尊へと昇格されました。

後期密教は日本には伝わっていないため、日本ではなじみがない、チベット密教ならではのホトケと言えるかもしれませんね!

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曼荼羅(マンダラ)とは?

密教の仏様・神様・女神様一覧_曼荼羅とは?

悟りに⾄る上で瞑想の修⾏は⽋かせません。密教における瞑想は、「仏の世界」あるいは「仏の教えたる大日如来」と⼀体になることを⽬指しますが、何の⼿がかりもなく仏の世界を想像するというのは非常に難しいことです。

そこで「教本」「テキスト」のような役割として⽤いられるのが、「諸仏諸尊が住まう場所」を表現した「曼荼羅(マンダラ)なのです。

曼荼羅についてもう少し詳しく

曼荼羅」とは、密教の経典にもとづき、主尊を中心に諸仏諸尊の集会する楼閣(つまりは、ホトケ様たちが住んでいる家・世界)を図示したものです。また、曼荼羅は聖域であり、 悟りの境地であり、仏教世界の構造を示した図であり、小宇宙がこの世界に顕現した姿でもあると言われます。

「曼荼羅(マンダラ、mandala)」という言葉は、サンスクリット語で「」を表します。インド、チベット、ネパールの後期密教では、曼荼羅は円で囲まれ、その内側に四角形の楼閣があるものが多いです。 そして、楼閣の中はいくつかに仕切られ、様々な尊格が各部屋に住んでいます。このような曼荼羅は、秩序立った空間(コスモス)としての世界の構造を示しています。また、曼荼羅は壁やタンカなどに平面的に描かれることがほとんどですが、その構造は立体として把握されます。つまり、仏たちが住まう楼閣・世界を、上から見た鳥瞰図となっているのです。

※一部の僧院などには仏たちが住まう世界を実際の姿のように立体に表現した「立体曼荼羅」や「砂曼荼羅」が残されています。

曼荼羅の歴史は、およそ1500年前にまでさかのぼります。インドでは密教が成立する5〜6世紀頃から曼荼羅の原初形態が現れ、密教の発展にともない大規模で洗練されたマンダラが描かれるようになりました。

瞑想の修行は、仏の世界を自分の頭の中に構築していくことです。ただ、何の手掛かりもなく闇雲に瞑想しても仏の世界を再現することはできないので、そこで登場するのが曼荼羅なのです。曼荼羅をもとに仏の住まう世界をイメージする、つまり曼荼羅は、瞑想の修行におけるテキストのような役割を果たすのです。

なお、日本における密教の曼荼羅と、チベットやネパールにおける密教の曼荼羅とでは、形の上でかなり違いが見られます。チベットなどの曼荼羅は円輪によって囲まれていますが、日本では円などでは囲まれていないのです。この違いは、日本・中国とインド・チベットにおいて世界の把握の仕方が異なっていることに基づくと考えられています。

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菩薩

密教の仏様・神様・女神様一覧と曼荼羅について_菩薩_観音・文殊・金剛手・弥勒・ターラー(多羅)女神

菩薩(bodhisattva、bodhisatta)」は、今なお如来となるために修行に励んでいるホトケです。菩薩の修行とは、世の中の生きとし生けるものを救うことであり、これは大乗仏教の中でも最も基本的で重要な修行です。

如来たちは遠く離れた世界に住んでいる最高位の存在なのに対し、菩薩は我々が生きるこの世の中にとどまって迷ったり苦しんでいる人々と接し、彼らを導きながら自分達も常に努力しているという存在です。

なお、菩薩の姿は出家前の釈迦の姿、すなわち、古代インドの王族のイメージが根底にあるとされています。そのため、髪は結い上げられ、きらびやかな装身具を身につけていることが多いです。

※菩薩については、すでに悟りを開いたうえで我々の世界に降りてきてくれて導いてくれる存在とも、まだ悟りを開いておらず、我々とともに悟りを開く修行をしながら導いてくれる存在ともされています。このあたりは日本の密教とチベット密教でも違いがあったり、そもそも個人によっても考え方が異なる印象があります。

観音菩薩(アヴァロキテーシュヴァラ、Avalokiteśvara)

観音菩薩は「慈悲」を象徴する菩薩であり、観自在観世音世自在とも呼ばれます。⽩い体で表現されるのが特徴で、日本のみならず、どの大乗仏教(密教)地域においても最もポピュラーな菩薩と言えるでしょう。

特にチベット密教においては、建国の王ソンツェン・ガンポや歴代のダライ・ラマ観音菩薩の化身とされるため、自国(チベット)は昔から観音菩薩に教化され導かれてきた国であるという歴史観があるそうです。

また、ネパールやインドのラダックなどをはじめとするチベット密教の地域では、「オンマニペメフム」の六字真言を仏格化した4本の腕をもつ観音菩薩(四臂観音が標準的なスタイルで、「六字観自在」や「六字観音」とも呼ばれます。そのため、チベット密教の地域では六字真言の信仰が盛んで、人々がよく唱えているほか、チベット密教のシンボルの一つとも言える祈祷旗「タルチョ」や「マニ車(マニコル)」と呼ばれる法具、「マニ石」と呼ばれる石にも刻まれています。

ダライ・ラマ14世はこの六字真言を、

  • オン(オーム):私たちの不浄な身体・言葉・思
  • マニ:宝石、宝珠:秩序、慈悲、他者への思いやりなど悟りを開くための要素
  • ペメ(パドメ):蓮、蓮華、蓮の花:矛盾から救い出す知恵の本質
  • フム:分離できないもの

という6つの真言で構成されており、「これら六つの真言は、私たちの不浄な身体・言葉・思考を、完全に統一された秩序と知恵の教えの道に導くことにより、仏陀になれる」という意味を持つと説明しています。

なお、千手観音や千顔観音として表現されることも多く、千手観音の場合は手のひらに慈悲の心を表した目が描かれていることがあり、多顔の観音菩薩の場合は一番上に載っているのは仏陀(釈迦牟尼)であることがほとんどで、これは観音菩薩の魂の父(上位の存在)が仏陀であることを表現しているとされています。

👉 タルチョやマニ車など、チベット密教における信仰についてはコチラで詳しく紹介しています!

文殊菩薩(マンジュシュリー、mañjuśrī)

観音菩薩についでポピュラーな菩薩といえるのが、文殊菩薩でしょう。智慧」「知恵」の菩薩であり、日本でも「三人寄れば文殊の知恵」という言葉で親しまれています。

基本的に、右⼿に剣、左⼿(あるいは左の花の上)に経典を持つのが特徴で、黄色い身体をしていることが多いです。

金剛手菩薩(ヴァジュラパーニ、Vajrapani)

金剛手菩薩は「」を象徴する菩薩です。主にチベット密教の地域で見られる菩薩で、日本では「金剛〇〇」という形で登場します。また、世界遺産アジャンター石窟の第1窟に描かれている壁画「菩薩像」は、金剛手菩薩であるとされています。

チベット密教においては、その名の通り⼿に⾦剛(ヴァジュラ)を持ち青い身体に恐ろしい形相をしていることが多いのが特徴です。また、チベット密教圏の各村には、観音・文殊・金剛手を象徴した白・黄・青のストゥーパが立っていることが多く、この3体の菩薩様が村を守っていると考えられています。

弥勒菩薩(マイトリーヤ、maitreya)

弥勒菩薩は、「未来に世界に降臨し、現世を救って導いてくれる」とされる未来仏です。その姿が⼤きければ⼤きいほど早くこの世を救ってくれるとされていることから、⼤きな仏像として表現されることが多いのが特徴です。

チベット仏教の地域では、英語名より「チャンバ」と呼ばれることの方が多い印象です。

ターラー(多羅菩薩)

日本ではあまりなじみがないターラー(多羅菩薩)ですが、チベット密教においては、不空成就如来の妃であり「あらゆる人々を救う仏の母」と考えられている、非常に多くの信仰を集める⼥神です。

「ターラー(tārā)」という名前は、サンスクリット語では「」、チベット密教においては「救度(あらゆる苦しみから救うこと)」という意味があるとされるほか、「輪の海を渡るのを助ける⼥性」を意味するともいわれます。

タ―ラーは、観音菩薩が「自分がいくら修行を重ねても、すべての生きとし生けるものは苦しみから逃れることはできない」と悲しんで流した涙から生まれた、とされています。そしてこの時、観音菩薩の右目の涙から「ホワイトターラー(白多羅)」が、左目の涙から「グリーンターラー(緑多羅)」が生まれたとされています。

また、チベット密教中興の祖ともされるアティーシャの弟子であるドムトゥンが興したカダム派では、釈迦如来・観音菩薩・不動明王・ターラー菩薩を「四本尊」としています。

※カダム派は現在は存在しない宗派ですが、その教義の類似性から、今日のチベット密教における最大宗派ゲルク派が吸収・合併した宗派になります。ゲルク派はダライ・ラマの宗派でもあります。

なお、密教においては、仏や守護尊のパートナーとなる⼥神は世界のエネルギー源とされ、他にも⾼い地位を持つ者が多く存在します。詳しくは後述します。


守護尊(イダム、へールカ)とヤブユム

密教の仏様・神様・女神様一覧と曼荼羅について_チベット密教における守護尊(イダム・へールカ)とヤブユム
時輪金剛尊とヴァジュラヴァーラーヒーのヤブユム
(画像出典:Wikipedia

密教では、僧侶や寺院が密教パンテオンから⼀尊を選び、⾃らの守り本尊(守り神のようなもの)にする習慣があります。チベット仏教においてはこの守り本尊を「守護尊(イダム、yi dam」といい、特に後期密教においてはへールカ(Heruka)」と呼ばれる「仏法を守る尊格」が選ばれることが多かったです。

へールカは日本の仏教では「明王」にあたるとされますが、チベット密教とでは解釈が異なります。ややこしいことに、日本などにおける明王と対応されるのは「忿怒尊」と呼ばれる存在であり、チベット密教(後期密教)におけるへールカは、五智如来や諸仏にも等しい存在とされて祀られました

守護尊は⼀般に、怒りを表す⻘⿊い体をし、多くの顔と腕をもちます(多面多臂ためんたひ)。そして最大の特徴が、妃の⼥尊(明妃みょうひ)と性行為をしている姿で表現されることにあります。この性⾏為中の姿はヤブユムと呼ばれ、チベット密教ならではです。

というのも、チベット密教として今では伝わる後期密教では、解脱に⾄るための修行⽅法として、性的ヨーガ、すなわち性⾏為を取り⼊れたのです。多くの宗教でタブー視されている性⾏為をあえて取り⼊れることで、ヒンドゥー教に劣勢を強いられていた仏教への関心を再び取り戻しつつ、それまで理屈が先⾏して頭でっかちになっていた仏教において実践的な改⾰を施したと考えられています。現在ではこの性的ヨーガは行われていませんが、描かれる守護尊には、その修行・信仰方法が今なお残されているわけですね。

なお、ヤブユムで交わる女尊は、赤い身体で描かれることが多いのが特徴です。

👉 チベット密教の概要について、詳しくはコチラの記事がオススメ!

秘密集会尊(グヒヤサマージャ、Guhyasamaja)

五智如来の一柱である阿閦如来の別側⾯とされるのが、秘密集会ひみつしゅうえです。

結跏趺坐を組んで座っているのが特徴です。

⼤威徳明王(ヤマーンタカ)

⼤威徳明王(ヤマーンタカ)は「死神ヤマ(閻魔)をも調伏する者」を意味し、呪詛や災難から守ってくれる存在とされています。チベット密教においては非常に多くの僧院で壁画や塑像として描かれており、信仰を集めています。

そんな⼤威徳明王の中でも、とりわけ⽔⽜の頭を持つ者は「怖畏⾦剛尊(ヴァジュラヴァイラヴァ、vajrabhairava)」と呼ばれます。

勝楽尊(チャクラサンヴァラ、Cakrasamvara)

勝楽尊は、罪⼈や、ヒンドゥー教の神や⼥神を踏みつける姿で描かれることが多く、複数の手にそれぞれ異なるものを持っているのが特徴です。神々を踏んでいるのは、ヒンドゥー教への優位を表現するためとされています。

ヤブユムで交わる妃は「ヴァジュラバーラヒー」です。

呼金剛尊(へーヴァジュラ、Hevajra)

呼金剛ここんごうは、手に頭蓋⾻(カパーラ)を持つのが特徴です。

ヤブユムで交わる妃は「ナイラートマー」です。

時輪金剛尊(カーラチャクラ、Kala Cakra)

時輪金剛尊は、過去・現在・未来の時間のサイクルを象徴したヘールカで、5本の指の⾊がすべて異なるのが特徴です。

ヤブユムで交わる妃は「ヴィシュヴァマーター」です。


護法尊(護法神)

密教の仏様・神様・女神様一覧と曼荼羅について_チベット密教における護法神(護法尊)_大黒天
チベット密教における大黒天
(画像出典:Wikipedia

護法尊(護法神)は、守護尊(イダム)やへールカと同じく仏の教えを守る神々です。守護尊とは区別される存在ですが、守護尊たちと同じように表現されることがほとんどです。ヒンドゥー教の神々を取り入れたものや、仏教伝来以前のチベットにおける土着の神々がもとの姿である者が多いです。

⼤⿊天(マハーカーラ、Mahakala)

日本でもおなじみの大黒天は、ヒンドゥー教における「シヴァ神」を密教に取り⼊れた存在です。名前は「⼤いなる⿊き者」を意味します。チベット密教においては、「ティコック」と呼ばれることも多い印象です。

閻魔天(ダルマラージャ)

閻魔も、日本でもおなじみの護法神ではないでしょうか。インド神話における死者の主(冥界神)「ヤマ」を仏教に取り入れた存在です。

「閻魔様」というと、地獄の主・冥界の王として死者の生前の罪を裁く神として知られますが、チベット密教では仏法を守る存在として描かれ、⽔⽜の頭を持つのが特徴です。

十忿怒尊

チベット密教(後期密教)における経典『秘密集会タントラ』にもとづく曼荼羅には、ヤマーンタカ(大威徳明王)ハヤグリーヴァ(馬頭明王)トライローキヤヴィジャヤ(降三世明王)アチャラ(不動)といった10人の忿怒尊が登場します。また、これら十忿怒尊のうち、ヤマーンタカやハヤグリーヴァなどは、チベット密教における守護尊(イダム)として選ばれることもあります。

チベット密教には「明王」という概念がなく、日本の明王に相当するのが忿怒尊と呼ばれます。

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四天王

密教の仏様・神様・女神様一覧と曼荼羅について_四天王_持国天・増長天・広目天・毘沙門天(多聞天)
中国における四天王
(画像出典:Wikipedia

四天王とは、仏教界において世界の中心に聳えるとされる「須弥山」の中腹に住んで仏法を守る、4人の護法神の総称です。もともとはインド神話に登場する雷神インドラ(帝釈天)の配下で、神将の姿で描かれることがほとんどです。

四天王は地域に関わらず大乗仏教全体で見られる神々であり、日本でも革製の甲冑を身に着けた唐代の武将の姿で描かれることが多い馴染み深い仏教神ではないでしょうか!

持国天(ドゥリタラースタラ、Dhrtarastra)

持国天は、を守護し、仏教界と世界の平和を司ります

日本では赤い体に刀を持った姿が多いですが、チベット密教においては琵琶と数珠を持ち、白い体で描かれることが多いです。

増長天(ヴィルダーカ、Virudhaka)

増長天は、を守護し、刀や剣、戟を持って仏敵や悪魔と戦う神将です。

日本を含む多くの地域では赤い体で描かれることが多いですが、チベット密教においては青い体で描かれることがほとんどなのが特徴です。

広目天(ヴィルパクシャ、Virupaksa)

広目天は、西を守護し、赤い体で描かれることが多いです。

サンスクリット語名の「ヴィルパクシャ」は「種々の眼をした者」「不格好な眼をした者」を意味しますが、その後「尋常でない眼、特殊な力を持った眼を持った者」と解釈され、最終的には「千里眼を持つ者」と拡大解釈され、「広目天」と訳されて四天王に数えられる存在となりました。

平安時代以前の日本では筆や巻物を持つ姿でも表現され、チベット密教においては、仏塔と蛇を持つ仏教の力を司る龍神の王として描かれています。

毘沙門天(多聞天、ヴァイスラヴァナ、Vaisravana)

毘沙門天(多聞天)は、を守護し、仏塔の宝を守る存在です。日本を含む多くの地域で、毘沙門天単独でも信仰の対象となっている四天王です。もともとはインド神話に古くから存在する神様であり、ヒンドゥー教にはおいては富と財宝の神「クベーラ」としても知られます。

日本では、独尊として祀る場合は「毘沙門天」、四天王の一人として祀る場合は「多聞天」と呼び分けることが一般的で、毘沙門天は、五穀豊穣や商売繁盛、家内安全や勝負事での益といった現世利益を授ける七福神の一柱として信仰されています。

チベット密教においては、金銀宝石を吐くマングースと、旗(傘蓋)あるいは仏塔(宝塔)を持ち、黄色い体で描かれることが多いのが特徴です。マングースを持つこの姿は、クベーラ神の特性を色濃く残していると言えます。

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女神

密教の仏様・神様一覧と曼荼羅について_チベット密教における女神信仰_緑ターラー
チベット密教における緑ターラー
(画像出典:Wikipedia

ヘールカに次ぐチベット密教(後期密教)における特色は、女神信仰が広く普及した点です。

ブッダ(釈迦)の生涯を記した仏伝では、ブッダの修行を最後に邪魔した者は悪魔が遣わした美しい女性たちあり、ブッダはその女性の誘惑に打ち勝って悟りを得たといわれています。このエピソードからも感じ取れるように、元来仏教では、異性との接触はタブーとされていました。

しかし、密教においては、血・骨・皮といった「不浄なもの」性行為など「隠しておくべきもの」とされる要素が悟りを得るための手段として積極的に取り入れられ、へールカ(守護尊)たちは自分たちの妃を抱いた姿で描かれるようになりました。

これには、7世紀以降のヒンドゥー教において、女神崇拝(シャクティ信仰)が盛んになったことも影響しています。ヒンドゥー教の男神の妃としての女神は「シャクティ」と呼ばれますが、「シャクティ」とはこの場合「」のことで、特に性力、つまり性的なエネルギーを意味します。仏教においても、女神たちは自分のパートナーである仏や尊格(男神)のエネルギー源とされ、最終的には宇宙のエネルギー源とまで考えられたのでした。

女性の仏は仏母 (ユム) と呼ばれ、チベット密教における密教パンテオンでは、女神は高い地位を占めています。

特に、仏眼仏母ぶつげんぶつも(ローチャナー)白衣明妃びゃくえみょうひ(パーンダラヴァーシニー)マーマキーターラーの四仏母は、密教における重要な曼荼羅とされる『法界語自在マンダラ』において、大日如来以外の四人の如来の妃(四妃)とされます。曼荼羅にも多く登場し、それぞれ、仏眼「地」・白衣「火」・マーマキー「水」・ターラー「風」を象徴します。

ほかにも、吉祥天女(パンデンラモ)仏頂尊勝母(ナムギャルマ)などが非常に人気を集めています。吉祥天はヒンドゥー教のラクシュミーが仏教に取り入れられた守護女神で、日本でも幸福や美、金運などに関わる女神として馴染み深いですよね!

仏眼仏母(ローチャナー)

仏眼仏母(ローチャナー)はブッダの眼がもつ力を神格化した女神で、チベット密教において五仏(五智如来)のうちの阿閦如来の妃とされています。

白衣明妃(パーンダラヴァーシニー)

白衣明妃(パーンダラヴァーシニー)は、チベット密教においては阿弥陀如来の妃とされ、白衣をまとい白蓮華の中に住んでいます。

日本では「白衣観音」と呼ばれ、菩薩のひとりとみなされています。

マーマキー

マーマキーは、一般的には宝生如来の妃とされますが、阿弥陀如来の妃とされることもあります。

日本では胎蔵マンダラに「忙莽鶏もうもうけい」として登場するくらいであまりなじみがありませんが、チベット密教においては人気のある女神です。


密教の神様・仏様と曼荼羅について まとめ

ということで今回は、大乗仏教の一宗派である密教における如来菩薩、仏法を守る神様である護法神四天王、さらにはチベット密教ならではの守護尊・へールカ女神たちをご紹介してきました!

知識として知ることはもちろん、こうした仏様や神様について少しでも知った上で、密教信仰が盛んな日本各地の寺社仏閣やチベット密教の信仰が根付く地域(地元チベットやネパール、インドのラダックやシッキム、ブータンなど)へ旅行すれば、観光がもっと面白く興味深くなること間違いなしです!

そして、密教やチベット密教についてさらに興味が湧いたという方は、ぜひ密教成立の歴史やチベット密教の概要、修行方法や信仰方法などもご覧になってみてください!きっとあなたのさらなる知識の扉が開くことでしょう!


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