みなさんこんにちは! 観光情報サイト「旅狼どっとこむ」の旅狼かいとです!
「2022ワールドカップ出場国の世界遺産を大紹介シリーズ!」、今回はグループAの最終回、オランダの世界遺産をご紹介していきます!
ヨーロッパでも有数の観光スポットを有し、日本からの海外旅行先でも屈指の人気を誇るオランダ。W杯2022でも、フィルジル・ファン・ダイク選手やフレンキー・デ・ヨング選手といった注目選手に活躍が期待される屈指の強豪国なのですよ!
日本代表も出場するそんなワールドカップは、世界各国について知れる絶好のチャンス! オランダがどんな国か知りたいという方はもちろん、世界遺産検定の勉強をしている方、純粋に世界遺産を知りたい方もぜひこの記事を参考にしてみてくださいね!
アムステルダム中心部
「アムステルダム中心部:ジンフェルグラハト内部の17世紀の環状運河地区」は、16世紀末~17世紀初頭にかけての新しい湾口都市プロジェクトとして建設された街であり、歴史地区の西と南へ広がる運河網はアムステルダムの旧市街全体を取り囲んでいます。
概要
アムステルダムの都市計画は、環状の運河網を利用することで沼沢地から排水し、運河間の空間を埋めることによって市街地の拡大を目指すプロジェクトでした。沼沢地の排水を進めつつ同心円状に運河が整備され、運河は旧市街から一番外の運河「ジンフェルグラハト」まで扇状に広げられたのでした。
アムステルダムの都市整備では街並みの統一も大きな目標に掲げられ、干拓地には切妻屋根の家や多数の記念建造物も完成していきます。また、オランダは海洋国家として16世紀末以降、黄金時代を迎えていました。日本との交易や東インド会社、西インド会社の設立などによる世界的交易網は、アムステルダムを世界有数の富裕都市に育て上げたのでした。
そうした時代背景も後押しし、完成した環状運河地域は、当時としては最大規模の干拓工事の成功例として、そして19世紀に至るまで最も統一の取れた優れた都市開発事業のモデルとして注目を集めることになったのでした。
登録範囲内には、アンネ・フランクがナチスの迫害を逃れ屋根裏に隠れて暮らしていたアパートも残っています。そこでの生活が『アンネの日記』に描かれていることでも知られています。
登録名と登録区分
Seventeenth-Century Canal Ring Area of Amsterdam inside the Singelgracht
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:2010年
基準:(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)(1,2,4)
アクセス
アムステルダムの防衛線の要塞
オランダの首都アムステルダムの市街を取り巻く防衛線の要塞は、治水技術を応用した巨大軍事施設です。
概要
1883~1920年にかけて建設された「アムステルダムの防塞線」は、市街の半径15~20kmを取り囲むように築いた全長135kmの堤防と45の要塞からなるシリアルノミネーションサイトです。
堤防や要塞は、有事の際に水門を開くことで堤防の外側3~10kmが浸水して敵の侵入を防ぐシステムとなっており、水の深さは0.5~1mと、人が歩くには深すぎで船が進むには浅すぎる水深に決められていました。
2021年に登録範囲が拡大されたことを受け、名称が”Defence Line of Amsterdam”から”Dutch Water Defence Lines”に変更されています。
登録名と登録区分
Dutch Water Defence Lines
区分:文化遺産
特殊なカテゴリー:シリアルノミネーションサイト
登録年と登録基準
年:1996年
基準:(ⅱ)(ⅳ)(ⅴ)(2,4,5)
アクセス(パンパス砦)
スホクラントと周辺の干拓地
アムステルダムの北東約60kmに位置するスホクラントは、1932年に築かれた全長30kmのアフスライト大堤防によって海没の危機を免れ、農業用干拓地へと生まれ変わった場所です。
概要
15世紀後半まで半島だったスホクラントは海水の侵食によって切り離されて島となり、19世紀半ばには人が住めない状態に至り、ついに海没する事態に直面します。
そこで、湾をなすゾイデル海を堤防で塞いで淡水湖にし、さらにその一部を農業用地として干拓。総面積2,200㎢という広大な面積の耕地が誕生し、新たにフレーヴォラント州という州ができたのでした。
スホクランドと周辺地域には有史以前のものと考えられている住居跡も残っており、オランダならではの環境に適応しながら進化してきた人々の営みと自然がつくり出す景観の顕著な例となっています。
登録名と登録区分
Schokland and Surroundings
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:1995年
基準:(ⅲ)(ⅴ)(3,5)
アクセス
キンデルダイク-エルスハウトの風車群
オランダのシンボルの一つとも言える風車。その内、ロッテルダムの南東約10kmに位置する「キンデルダイク」に18世紀に建造された19基の排水用風車群が世界遺産に登録されています。
概要
国名の「ネーデルラント(Nederland)」が「低地」を意味しているように、オランダの国土は約27%が海抜0m以下です。水はけが悪く湿地帯が多いため、人々は長い間、水害に苦しめられてきたのです。
そのためネーデルラントに住む人々は、潮の満ち引きによる水位の差を利用して湿地の水を抜き、堤防や水路によって土地を水から守ってきました。しかし、干拓による地盤沈下が徐々に進むと自然排水だけでは水害を防げなくなってしまいます。
そこで、排水ポンプとして利用され始めたのが風車だったのです。
オリエントに起源を持つ風車は、12世紀頃に十字軍によってオランダに伝えられました。当初は製粉用に使われていましたが、やがて排水用に改良され、18世紀半ばに排水用風車が造られ始めました。風車は水害を防ぐだけでなく、湿地帯を農地や牧草地に変え、オランダを農業大国に育て上げる役目も果たしました。
排水用風車には1枚約14mの4枚の羽根が十字形につけられており、羽から得た動力で風車を回転させることで水を低地から高地へと移動させていました。風車の利用が最も盛んだった19世紀半ばにはオランダ全土で約1万基の風車が稼働していましたが、蒸気式水揚げポンプや石油・電気を使用した排水設備が登場すると、風車はその役割を終えたのでした。
世界遺産に登録されているキンデルダイクの田園に立ち並ぶ19基の風車はアルブラセルワールト干拓地の排水のために作られた施設であり、今なお稼働を続けています。水と湿地との闘いを繰り広げてきた人々の創意と工夫の歴史を今に伝えているのです。
登録名と登録区分
Mill Network at Kinderdijk-Elshout
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:1997年
基準:(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)(1,2,4)
アクセス
ウィレムスタットの歴史地区
「ウィレムスタットの歴史地区:キュラソーにある内陸都市と港」は、17世紀にオランダ西インド会社によって築かれた街です。
概要
カリブ海のキュラソー(クラサオ)にある湾口市街「ウィレムスタットの歴史地区」。
1634年にオランダがスペインからクラサオ島(キュラソー島)を奪取すると、島の東にあるセント・アナ・ベイという入江にアムステルダム要塞を建設。18世紀に入ると、要塞の西側にオランダのみならずスペインやポルトガルの様式も入り混ざった様式で市街が形成されていきました。
オランダ人が入植して以降に建設された建物の多くは輸入したレンガを使用した切妻屋根となっており、本国のアムステルダムを彷彿とさせるのが特徴です。特に、赤や黄、青や緑の色をした壁に、曲線を用いた切妻屋根と回廊を持つクラサオ・バロック様式の建物やクイーン・エンマ橋が有名です。
1997年に世界遺産登録された際は「オランダ領アンティルの港町ウィレムスタットの歴史地区」という名称でしたが、オランダ領アンティルが解体されてキュラソー島が単独で自治領となった経緯から、2011年に現在の名称へと変更されました。
登録名と登録区分
Historic Area of Willemstad, Inner City and Harbour, Curaçao
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:1997年
基準:(ⅱ)(ⅳ)(ⅴ)(2,4,5)
アクセス
Ir.D.F.ヴァウダヘマール
オランダ北部の街レメルにある蒸気水揚げポンプ場は、20世紀前半に水利技師「D.F.ヴァウダ」によって建造された世界最大の規模を誇る排水施設になります。
概要
当時オランダには約700ヶ所のポンプ場がありましたが、1920年に完成した4基の蒸気エンジンが並ぶ「D.F.ヴァウダ技師による蒸気水揚げポンプ場(Ir.D.F.ヴァウダヘマール)」はその集大成とされています。蒸気ポンプはその後、ディーゼルエンジンや電力によるポンプに代わっていくものの、ヴァウダ蒸気水揚げポンプ場は現在も稼働しています。
また、機械室や回廊のインテリアなど、20世紀を代表するインダストリアルデザインの好例としても高い評価がなされています。
登録名と登録区分
Ir.D.F. Woudagemaal(D.F. Wouda Steam Pumping Station)
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:1998年
基準:(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)(1,2,4)
アクセス
ベームスター干拓地
アムステルダムの北約20kmにある「ベームスター干拓地(ドゥローフマーケライ・デ・ベームスター)」は、17世紀初頭につくられたオランダ最古の干拓地です。
概要
ベームスター干拓地は、5年の歳月をかけて約70㎢に及ぶ内海を排水用風車で干拓した土地であり、正確な測量によって整然と区画された農地とされました。
それぞれ180×900mに分けられた区画の周りには、全部で47の水車を備えた水路や堤防、道路なども計画的に配され、現代に至るまで原形のまま残されています。
また、干拓地の美しい景観は裕福な商人たちから人気を集め、邸宅地としても利用されました。
登録名と登録区分
Droogmakerij de Beemster(Beemster Polder)
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:1999年
基準:(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)(1,2,4)
アクセス
リートフェルト設計のシュレーダー邸
ユトレヒトに立つ「シュレーダー邸」は、1924年、建築家へリット・トマス・リートフェルトが銀行家の未亡人シュレーダー夫人の依頼により設計した邸宅です。
概要
リートフェルトは、20世紀初期にオランダで起こった造形の純粋性を追求する芸術運動「デ・ステイル」の中心人物です。
「デ・ステイル」はオランダ語で「様式」という意味であり、リートフェルトとともにデ・ステイルの中心人物であった抽象画家ピート・モンドリアンの絵画のような、空間をシンプルな線や面、色によって幾何学的に構成する垂直と水平を重視する様式です。
シュレーダー邸はデ・ステイルで唯一現存する建築物であり、新造形主義に則った近代建築の傑作とされています。
登録名と登録区分
Rietveld Schröderhuis (Rietveld Schröder House)
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:2000年
基準:(ⅰ)(ⅱ)(1,2)
アクセス
ファン・ネレ工場
「ファン・ネレ工場」は1920年代にロッテルダム近郊の工業地帯に建てられた、紅茶やコーヒー、タバコの生産加工、包装を行った工場群です。
概要
建物の内部構造では主に鉄筋コンクリートが用いられている他、ガラスと鉄を多用した、柱で荷重を支える大面積のカーテンウォールを有します。このカーテンウォールは採光に優れ、暗くなりがちな工場の労働環境を明るく快適にする役割を担いました。
快適な労働環境が整備され、外の世界に開かれた「理想の工場」として考案されたファン・ネレ工場は、両大戦の戦間期におけるモダニズムと機能主義文化の象徴的な工場とされています。
登録名と登録区分
Van Nellefabriek
区分:文化遺産
登録年と登録基準
年:2014年
基準:(ⅱ)(ⅳ)(2,4)
アクセス
慈善のコロニー群
オランダの2資産、ベルギーの1資産からなる「慈善のコロニー群」は、19世紀から社会改革の実験として慈善目的で建設された居住地群です。
概要
コロニー群は都市の貧困問題を解決するため、1818年にオランダのフレーデリクスオールトに最初に建てられました。農場と一体となっていたコロニーは孤児やホームレスの住居となり、かわりに労働として農業に従事するという仕組みとなっていました。
オランダは19世紀半ばに約11,000人、ベルギーでは1910年ごろに6,000人ほどの人口を抱え、ピークを迎えたこれらのコロニー群は、19世紀の革新的な貧民救済と国内開拓のモデルを示しています。
登録名と登録区分
Colonies of Benevolence
区分:文化遺産
特殊なカテゴリー:シリアルノミネーションサイト、トランスバウンダリーサイト
登録年と登録基準
年:2021年
基準:(ⅲ)(ⅳ)(3,4)
アクセス(フレーデリクスオールト)
ローマ帝国の国境線 – 低地ゲルマンリーメス
「ローマ帝国の国境線 – 低地ゲルマンリーメスについて」は、2021年にオランダとドイツのトランスバウンダリーサイトとして登録された文化遺産です。
概要
ドイツのレニッシュ山塊からオランダの北海沿岸まで、約400kmにもわたるワール川・ライン川左岸に沿って続いているローマ時代の一連の遺産です。砦や塔、基地や道路などが地中に埋まっており、一連の構成資産を有するシリアルノミネーションサイトでもあります。
名前にある「リーメス(リメス)」とはラテン語で「境界」を意味し、ローマ帝国時代の防砦システムやローマ領の境界線を示します。
「ローマ帝国の国境線」としては、「ハドリアヌスの長城」などを構成資産に含むイギリスとドイツとのトランスバウンダリーサイトがすでに世界遺産に登録されていますが、今回は別の遺産として登録されています。
登録名と登録区分
Frontiers of the Roman Empire – The Lower German Limes
区分:文化遺産
特殊なカテゴリー:シリアルノミネーションサイト、トランスバウンダリーサイト
登録年と登録基準
年:2021年
基準:(ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)(2,3,4)
アクセス(ケルステンダールのローマ水道)
ワッデン海
ヨーロッパ大陸北西部、北海沿岸のフリースラント地方に広がる「ワッデン海」は、オランダのワッデン海保全地域、ドイツのワッデン海国立公園、デンマークのワッデン海海洋保護区からなるトランスバウンダリーサイトです。
概要
ワッデン海の海岸沿いの湿地帯には、潮の干潮によって生み出された砂洲や干潟、塩田や三角江、潮の水路や砂丘などの多様な環境が広がっています。それによって、海洋性植物の平原や貝類の生育地など、さまざまな動植物によっての重要な生息地となっています。干潟にはヨーロッパ北西部の渡り鳥の10%に相当する年間1,200万羽以上もの鳥たちが飛来し、1987年にラムサール条約にも登録されています。
海域にも、アザラシやイルカといった海棲哺乳類をはじめとする数多くの動植物が生息しているワッデン海は、ヨーロッパ北西部の自然環境と生態系を守るための貴重な自然遺産なのです。
登録名と登録区分
Wadden Sea
区分:自然遺産
特殊なカテゴリー:トランスバウンダリーサイト
登録年と登録基準
年:2009年
基準:(ⅷ)(ⅸ)(ⅹ)(8,9,10)
アクセス
オランダの世界遺産一覧と地図
遺産名 | 区分 | 登録年 | 登録基準 | その他 |
---|---|---|---|---|
アムステルダム中心部 :ジンフェルグラハト内部の17世紀の環状運河地区 | 文化遺産 | 2010年 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) | |
アムステルダムの防衛線の要塞 | 文化遺産 | 1996年 | (ⅱ)(ⅳ)(ⅴ) | シリアルノミネーション |
スホクラントと周辺の干拓地 | 文化遺産 | 1995年 | (ⅲ)(ⅴ) | |
キンデルダイク-エルスハウトの風車群 | 文化遺産 | 1997年 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) | |
ウィレムスタットの歴史地区 :キュラソーにある内陸都市と港 | 文化遺産 | 1997年 | (ⅱ)(ⅳ)(ⅴ) | |
D.F.ヴァウダ技師による蒸気水揚げポンプ場 | 文化遺産 | 1998年 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) | |
ベームスター干拓地 | 文化遺産 | 1999年 | (ⅰ)(ⅱ)(ⅳ) | |
リートフェルト設計のシュレーダー邸 | 文化遺産 | 2000年 | (ⅰ)(ⅱ) | |
ファン・ネレ工場 | 文化遺産 | 2014年 | (ⅱ)(ⅳ) | |
慈善のコロニー群 | 文化遺産 | 2021年 | (ⅲ)(ⅳ) | ・シリアルノミネーション ・トランスバウンダリー |
ローマ帝国の国境線 – 低地ゲルマンリーメス | 文化遺産 | 2021年 | (ⅱ)(ⅲ)(ⅳ) | ・シリアルノミネーション ・トランスバウンダリー |
ワッデン海 | 自然遺産 | 2009年 | (ⅷ)(ⅸ)(ⅹ) | トランスバウンダリー |
文化遺産:11件 ・ 自然遺産:1件
【合計】12件
オランダの世界遺産 まとめ
ということで今回は、2022年のサッカーW杯に出場するオランダの世界遺産についてまとめてきました!
アムステルダムや風車など観光名所が目白押しのオランダですが、世界遺産もまた魅力ある場所ばかりでしたね! この記事をきっかけにして、世界史や旅行などあなたの興味の幅が少しでも広がってくれたのならとても嬉しく思います。
「2022ワールドカップ出場国の世界遺産を大紹介シリーズ!」、今回のオランダでグループAは終了!
次回からはグループBのイギリス(イングランド・ウェールズ)、イラン、アメリカをご紹介していきます! W杯でも注目が集まるグループであり、世界遺産も非常に多い国々です! ぜひお楽しみに〜!
※この記事の世界遺産情報は『世界遺産大辞典<下> 世界遺産検定1級 公式テキスト 第2版』が主な出典となっています。
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