今回の記事でご紹介するのは、上賀茂神社とともに賀茂神社を成す「下鴨神社」についてです!
京都最古の歴史を誇るといわれる賀茂神社。
いまだ成立の詳しい経緯がわかっていないなど謎が多い面を持ちならがらも、「葵祭(賀茂祭)」といった“形”は脈々と受け継がれてきている、まさに“日本ならではの信仰“を表現したような神社になります。
そんな賀茂神社の“下半分を担う“と言える下鴨神社の境内には、霊験あらたかな女性守護の信仰をもつ摂社や、天地開闢を担った一柱を祀る縁結びの社があったりと、下鴨神社特有のパワースポットがあるのです!
京都開拓以前から広がる森や、ある時期にだけ湧く不思議な清水など、信仰とともにあったその自然もまた特別。
見どころ満載・パワーもりもりの下鴨神社の魅力や観光案内を、このブログではどどんとお届けしていきます!!
〜もくじ〜
下鴨神社について

正式には「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」と呼ばれる下鴨神社。
鴨川を上流の方へと行ったところにある上賀茂神社(賀茂別雷神社)と合わせて賀茂氏の氏神を祀る「賀茂神社(賀茂社)」と総称され、「古都京都の文化財」の一部としてユネスコの世界文化遺産にも登録されています。
本殿には、上賀茂神社の祭神である賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)の母「玉依姫(たまよりひめ、玉櫛媛とも)」と、玉依姫の父(賀茂別雷命の祖父)の「賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)」が祀られています。
下鴨神社は、2つの川の合流点から一直線に伸びた参道と、その正面に配した神殿という直線的な配置になっており、境内には、「糺の森(ただすのもり)」や「みたらし池(みたらし川)」といった下鴨神社特有の自然の名所が多く見られるのも特徴です。
下鴨神社の歴史

上賀茂神社とともに、京都最古の歴史を持つと言われる下鴨神社。
そんな下鴨神社の創起について、確実な年数は今でもわかっていないのですが、崇神天皇七年(BC90年)に下鴨神社の瑞垣の修造が行われたという記録があることから、それ以前の古い時代から存在していたと考えられています。
これは、境内に広がる糺の森周辺の発掘調査で縄文時代の土器や弥生時代の住居跡がたくさん発掘されたことからも裏付けられるとされています。
また、社伝や歴史書に、下鴨神社で行われた祭りや社殿、神宝の奉納などについて記録されており、『続日本紀』の文武天皇二年(698年)には、葵祭に見物人がたくさん集まるので警備するようにという命令が出された、という記述もあるそうです。
このことから、奈良時代より前から下鴨神社が規模の大きな神社であり、盛大な祭が行われていたことがわかります。
平安時代には、上賀茂神社とともに朝廷からの庇護を受け、伊勢神宮の式年遷宮や斎王の制度などを倣って定められていた特別な神社であったことが記録されています。
そして、『源氏物語』や『枕草子』といった、平安を代表する文学作品の数々にも登場することから、この時代の文化、宗教の中心地の一つとして栄えていたと考えられています。
ちなみに「式年遷宮」とは、20年に一度、境内自体はそのままに社殿や神宝をはじめとする境内の中身すべてを一新し、祭神に新しく清浄な境内・社殿へと遷ってもらうための儀式になります。
式年遷宮の文化の“大元“である伊勢神宮では「20年に一度」ですが、上賀茂神社・下鴨神社の賀茂神社では「21年に一度」行われているのが特徴です。
下鴨神社の祭神について

下鴨神社には、「玉依姫(たまよりひめ)」と「賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)」の二神が祀られています。
賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)は、古代の京都を拓いた神で、山城の国一宮として京都の守護神としても祀られている、いわば京都創建に関わった神の一柱になります。
また、神武東征(神武天皇が初めて天皇の位につくための東征)の際、八咫烏に変身して神武天皇を先導し、金鵄(きんし、金色のトビ)として勝利に貢献したことから、八咫烏と金鵄は賀茂建角身命の化身とされています。
一方の玉依姫(たまよりひめ)は、「玉櫛媛」などとも書かれる賀茂建角身命の子神で、山城国『風土記』などにおいて、川(鴨川という説)で禊をしているときに上流から流れ来た丹塗の矢を拾い、持ち帰って床に置いておいたところ懐妊し、その後、賀茂別雷命(上賀茂神社の祭神)を産んだという神話で知られている女神になります。
賀茂建角身命は、農耕をひろめ民生の安定につとめたという伝承から、世界平和や五穀豊穣、殖産興業、身体病難解除のご利益があるだけでなく、『古事記』や『日本書紀』に記された、神武天皇を金鵄八咫烏に化して導いた姿から、導きの神や勝利の神、方除、厄除け、入学・就職の試験などの合格、交通・旅行・操業の安全などなど、非常に多くのご利益を有しています。
そんな賀茂建角身命の子神である玉依姫は、『風土記』に記された賀茂別雷命を産んだ伝説から、婦道の守護神として縁結びや安産、育児のご利益が、また、水を司る神としてもご利益を有しています。
下鴨神社を歩く

ではでは、ここからは下鴨神社の実際の様子と併せながら、見どころや細かな観光地をご紹介していきますよ!
“女性守護の社”河合神社

鴨川下流側の参道から入ったところすぐにあるのが、「河合神社」になります!

河合神社は下鴨神社の摂社として古くより祀られ、女性守護の信仰を集める神社です。
河合神社に祀られているのは神武天皇の母「玉依姫」。
この玉依姫が「玉の様に美しい」と称えられるほどの美貌の持ち主だったという逸話から、玉依姫は美麗の神としての信仰が深くなり、河合神社は「女性守護の社」と呼ばれるようになったといいます。

ちなみに、“河合神社の祭神の“玉依姫は「初代天皇である神武天皇の母」と紹介されますが、“下鴨神社の祭神の“玉依姫は「賀茂別雷命の母」であり、神武天皇の皇后(初代皇后)の媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ、比売多多良伊須気余理比売とも)の母です。
どうやら「タマヨリビメ(ヒメ)」という名は、「神霊が依り憑く巫女」という意味を持っているようで、『古事記』や『日本書紀』には何人か「タマヨリビメ」の読み方をする女性(女神)が登場するのです。
僕が調べた限りでは、河合神社の祭神の玉依姫は「玉依毘売」などと、下鴨神社の祭神の玉依姫は「玉櫛媛(たまくしびめ)」や「建玉依比売命(たけたまよりひめのみこと)」などと書かれることで区別しているようでした。
この河合神社の祭神についても、「玉依姫」の混同によって、本来は“玉櫛媛の方の“玉依姫を祀っていたはずが、いつの間にか“玉依毘売“の玉依姫を祀ることになったというのは大いに考えられると、僕は勝手に考察しています。笑
ともあれ、“河合神社の“玉依姫が女性守護のご利益を有していることには変わりありませんからね!
そんな河合神社の見どころは、「鏡絵馬」になります!

手鏡の形をした絵馬には顔を表す模様が入っており、この鏡絵馬に自分が普段使っている化粧品でメイクをし、裏に願い事を書くという絵馬。
鏡絵馬に自身の綺麗な表情を描いて願いを託すことにより、外見だけでなく内面も磨いて美しくなっていただくという、文字通り“美麗“を祈願できる絵馬となっています。
(メイク道具を持っていなくても、色鉛筆がおいてある「御化粧室」で鏡絵馬のお化粧をすることができますのでご安心を!)
メイクと願いを書き終えたら、本殿の祭壇にある鏡に姿を映しに行くのが習わしだそうです!
また、鏡の前には「御白石(おしらいし)」という白い石が置いてあり、白い肌になるようにと美白を願って手を触れると、ご利益がいただけるといわれています。
加えて、この河合神社は、『徒然草』と『枕草子』とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられる『方丈記』を記した「鴨長明」に関係の深い神社にもなります。
鴨長明は、下鴨神社と河合神社の神事を統率する禰宜であった鴨長継の次男として生まれたことから、幼少期をこの地で過ごしていたと言われているのです。
現在ではこの所縁から、河合神社の境内に長明が晩年過ごしたと言われる建物を再現した「方丈の庵」が展示されています。

“京都古来の社叢”糺の森


「糺の森(ただすのもり)」は、下鴨神社を覆うようにして広がる森の名称です。

糺の森は、下鴨神社を守る鎮守の森(社叢(しゃそう))でありながら、京都市内唯一の自然の森でもあり、現在では京都開拓以前の古代山背の原生林の面影を伝える貴重な森となっています。
応仁の乱の際に森の約7割が焼失していることから、本来はもっと広く、様々な植生を有していたとも考えられており、その雰囲気や歴史の深さから、この森そのものをパワースポットとする声も多いそうですよ!

「糺の森」の「ただす」が何に由来するのかという点については諸説あり、「偽りを糺す(厳しく問いただすのただす)」の意するほか、賀茂川と高野川の合流点であることから「只洲」とつけられたという説、清水の湧き出ることから「直澄」とした説、さらには多多須玉依姫(神武天皇の母の方)の神名に由来する説など、実に多くの説が存在しています。
それだけの説がありながらいまだ謎が多いということからも、糺の森を含めた下鴨神社の歴史がどれだけ古いかということを感じることができますね…!







“格が段違いの縁結びパワースポット”相生社

下鴨神社の心臓部たる楼門の中へ入る前に、もう一箇所見どころがあります。
それが、縁結びのパワースポットとして古くから人気を集める「相生社(あいおいしゃ、あいおいのやしろ)」です!
下鴨神社本殿に祀られる玉依姫(玉櫛媛)も縁結びのご利益があると紹介しましたが、相生社の祭神は「神皇産霊神(かみむすびのかみ)」になります。
この神皇産霊神が、こと縁結びについては絶大な霊験を持つということから、下鴨神社の相生社は古くから信仰を集めているのです。
「産霊神(むすひのかみ、むすびのかみ)」とも呼ばれる神皇産霊神は、『古事記』において、天地開闢の際に高天原に現れた「別天津神(ことあまつかみ)」の中でも最初の天地創造に関わった「造化の三神」の一柱として描かれている神で、地の生産・生成という「創造」の神であり、男女の「むすび」における女を象徴する神でもあります。
産霊神は宇宙の生成力を神格化したものともされ、「産(ムス)」は「苔がむす」の“ムス“と同じく「生成」の意味をもち、「霊(ヒ)」は「日」や「火」と同じの意味、つまり、「霊妙な物」を表わす語と考えられています。
小難しい言葉を並べましたが、とにかく相生社では日本の神様の中でも格別中の別格を祀っているということが伝わっていれば問題ありません!笑

そんな神皇産霊神の霊験の現れであると伝えられているのが、お社のすぐ近くにある「連理の賢木(れんりのさかき)」です。
このご神木は、二本の木が途中から一本に結ばれているという不思議な木で、昔から「京の七不思議」の一つに数えられています。
同じように、雌雄二本の松が一つの根から伸びているように見える「相生の松」への信仰以前から糺の森に立っていたとされており、現在の連理の賢木は4代目。
代を次いで糺の森にこの形の木が生まれてくるのも、とても不思議なことであり、神皇産霊神の霊験の現れだと言われる要因の一つとなっており、縁結びの象徴として知られています。
このように、知れば知るほどパワースポットであることがわかる相生社。
実は“正しいお参りの仕方“というものが存在するのです。
それがこれ!
下鴨神社の公式サイトの画像ですので、ぜひこれを参考にして良縁を手に入れちゃってくださいね!

「小さな石が長い年月をかけて一つの大きな岩となったもの」を指すさざれ石。神霊が宿る場所として古くから信仰されてきたもので、国歌『君が代』でも歌われていますよね!
下鴨神社の“心臓部”
ではでは、やっとこさ下鴨神社の中心部へと進んでいきます!









“清水が湧き出る地”みたらし池と御手洗社

井戸の上に建つことから「井上社」とも呼ばれます。
さらに奥に進むと、少し開けた場所に出ます。
ここは「みたらし池(みたらし川)」と呼ばれる場所で、土用の丑の日のころになると、池の周りや川底から膝がつかるほどの清水が湧き出てくることから、「鴨の七不思議」の一つに数えられています。
「みたらし団子」は、このみたらし池に湧きあがる水泡の姿を団子にかたどったことが発祥である、という説があるほどの池でもあるのですよ!
そして、みたらし池の清水は、毎年5月15日に行われる「葵祭(賀茂祭)」の主役である斎王代が、祭りの前日に禊をする場所としても知られていますね!
また、湧き出る清水に足をつけると疫病や脚気にかからないと言われており、無病息災を祈って池に脚をつける「足つけ神事(御手洗祭)」が例年土用の丑の前後5日間にわたって行われるほか、立秋の前夜には、みたらし池の中央に50本の斎串(イグシ)を立てて裸の男たちが奪い合い、安産や商売繁盛を祈願する「矢取りの神事(夏越神事)」が行われます。
このような祭りだけでなく、みたらし池の清水を利用した「水占い」ができるのも、今日の下鴨神社の名物となっていますね!
“十二支を祀るお社”言社

楼門から舞殿を挟んで真っ直ぐのところにあるのが、「言社(ことしゃ)」になります。
言社は、地元の方々からは「大國さん」とも呼ばれ親しまれているお社で、七つのお社に十二支(干支)が祀られているのが特徴です。
一言社:大国魂命・顥國魂命
二言社:大国主命・大物主命
三言社:大己貴命・志固男命・八干矛命
干支を祀っているなんてなかなか見ないと僕は感じましたね〜!
ご自身の生れ年の守護神に、ぜひお参りして行ってみてください!


帰り道の糺の森
帰りももちろん、糺の森を通りますよ!







季節で巡る下鴨神社

最後に、僕が下鴨神社へ行ったことのある季節ごとにその様子をまとめてみました!
年始・三が日頃
まずは年始の下鴨神社です。
初詣と題し、僕の中ではナンバーワンパワースポットである上賀茂神社とともに詣らせていただきました。




春・桜の季節
お次は春の桜の季節。








ここだけですが、これで十分な雅さです…!



秋・紅葉の季節
そして、秋の紅葉の季節です!
と言っても、紅葉、と大々的に言えるほどの時期ではなく、今回は10月中旬の訪問です。笑
ちなみに、ここまでの観光案内で使用した写真はこの時期のものです!




懐かしいなぁ。。








下鴨神社のまとめ

ということで、今回は京都の出町柳にある下鴨神社についてご紹介してきました!
上賀茂神社とともに賀茂神社として京都最古の歴史を誇るのはもちろん、女性守護の河合神社、縁結びの相生社、京都が拓かれる以前から広がる糺の森など、京都有数のパワースポットとしての魅力も盛り沢山の下鴨神社。
土用の丑の日に行われる御手洗祭(足つけ神事)では、1000年以上の歴史がある葵祭におけるヒロイン斎王代の禊に使われる清水に実際につかることができますし、言社では干支ごとにお参りができるという珍しい信仰もあります。
京都の世界遺産観光地として訪れるのはもちろん、縁結び・商売繁盛・無病息災のご利益をいただくという意味でも、ぜひ下鴨神社へ足を運んでみてください!
もしかしたら、あなたの一番のパワースポットになるかもしれませんよ…!!
下鴨神社の観光案内

拝観時間
夏時間 5:30~18:00
冬時間 6:30~17:00
無休
料金
境内無料
御祈祷:1万円~(9:00~16:00、当日受付のみ)
特別拝観「大炊殿(おおいどの)」の拝観:初穂料500円(中学生以下無料、10:00~16:00)
紅葉の見頃
色づき始め:12月上旬
見頃:12月上旬~12月中旬
桜の見頃
3月下旬~4月上旬
アクセス
京阪・叡山電鉄出町柳駅より徒歩12分
京都駅方面より、市バス4番・205番で下鴨神社前、もしくは糺ノ森前
神社西側に駐車場あり